ミリ風呂

硬派なミリタリー系ブログ

特殊部隊の装備

 本投稿においては、特殊部隊(対テロ部隊)が身に着ける基本の装備を列挙してみる。隊員は任務によって約14kg~23kgの装備を着用する。サバイバルゲーム等でリアルな装備を用意する方は、ぜひ参考にして欲しい。(情報が少し古いのであしからず。今はドローンの他様々な最新装備もあるが、装備の本質は変わらない。)

 

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 頭部装備

 1 防弾ヘルメット

   ケブラーやアラミドのような繊維をプラスチックで固めた繊維強化プラスチックで形成される。防護能力は拳銃弾や榴弾の破片の阻止が主眼であり、マッハ2を超える口径5.56mm以上の高速弾等の阻止は、困難である。しかし、狙撃銃による銃弾がLWHヘルメット(米海兵隊装備)に直撃しながらも奇跡的に防護できた事例もあり、完全に小銃弾等に対する防護能力がない訳ではない。ヘッドセットの装着を考慮し、ハイカットタイプ(両耳部分を大きく切りとった様)も多い。

 2 バラクラバ帽(目出し帽)

   2つのの理由で装着する。

  ① 顔面の防護

    ガラス片や金属片等から顔面を防護

  ② 身元の保護

    犯罪組織による本人や家族への報復の防止

 3 戦術ゴーグル

   ガラス片や金属片から眼球を防護。通常はクリアタイプを使用するが、状況に応じてカラータイプも使用する。オレンジ系色は、動態視力をわずかに向上させるという特性もある。

 4 ヘッドセット(通信機用)

   通信の実施に限らず、聴覚の保護も兼ねているものが多い。また、マイクは骨伝導タイプが主流になっている。

 5 ガスマスク(任務により着用又は携行)

   敵が化学剤を使用した兆候(又は使用する可能性)があれば当然装着する。また、顔面を保護する機能も有する。

 上体装備

 1 上 衣

   カバーオール(つなぎ)を着用することもある。対テロ部隊の場合、装着する衣服は黒色が多いが、2つの理由(効果)がある。

  ① 夜間のカモフラージュ効果

  ② 敵を威圧して躊躇させる効果

 2 装備装着用戦術ベスト

   弾倉、ライト、通信機、救急用品等を収納するため多くのポーチを備える。

 3 ケブラー製防弾チョッキ

   チキンプレートというセラミックや鋼鉄製の円盤を心臓部に入れることでさらに防護性を向上させることができる。

 4 手 袋

   手の保護に限らず、銃器等の操作性を高める効果も持つ。

 下体装備

 1 下 衣

   カバーオール(つなぎ)を着用することもある。

 2 すね当て

   徒手格闘等を予期して装着することもある。

 3 突撃用ブーツ

   つま先に鉄製の補強材を有する。地面と接する靴底のパターンは、垂直登攀や匍匐前進を考慮して刻まれているものや、床に落ちている排出薬莢を踏んでも滑りにくい構造をしているものある。

 4 弾 帯

 5 大腿ホルスター

   拳銃と弾倉も収納可能。ブラックホーク社製が多い。

 6 大腿ポーチ 

 携行品

 1 個人携行火器

   サブマシンガン及び負い紐

   主流はサブマシンガンである。室内での取り回しや命中精度等を考慮しつつ十分な火力を備えているからである。MP7が世界的に使用されているがMP5も依然として現役である。当然、任務や役割に応じて機関銃、散弾銃、狙撃銃、突撃銃等の使用もある。突撃銃は室内のように狭い空間では取り回しが劣るほか、射程が長すぎて弾の貫徹力が強すぎるので大部分の目的においてはサブマシンガンに取って代わられた。また、ライフル弾が目標にあたらなかった場合、壁や床を突き抜けて誰かに当たる可能性もある。

 2 特殊閃光音響弾

   M84スタングレネードが有名である。同弾の発想を得たのはイギリス(SAS)である。起爆と同時に170~180デシベルの爆発音と15m範囲での100万カンデラ以上の閃光を放つ。180デシベルの音量は、直近に落ちた落雷による発生音をは遥かに凌駕する。場合によって、鼓膜は爆発音に耐え切れず破裂する。100万カンデラの光量は、乗用車のヘッドライト級の光量である。以上の作用で防護されていない人員は、突発的な目の眩み、難聴等により方向感覚の喪失や見当識の失調を起こす。

 3 催眠スプレー(弾)

   拘束用

 4 ナイフ

   近接戦闘用の他、拘束されている者の救出にも利用する。

 5 スタンガン(9万ボルト以上)

   拘束用

 6 手錠又はタイラップ

   拘束用

 7 発光スティック

   可視光線又は赤外線タイプ。敵との識別に使用することが多い。

 追加装備(任務によって取捨選択)

 1 障壁突破用具

   ハンマー、つるはし、やっとこ

 2 爆発物

   成型炸薬、C-4、起爆コード、リボン切断爆薬

 3 鏡

 4 金属探知機

 5 暗視ゴーグル(第2・3世代)

 6 手榴弾(発煙・刺激)

 7 防弾盾

 8 梯子

 9 サプレッサー

10 ガラス切り

11 ラペリング用具

12 潜水具

13 双眼鏡

14 監視機器

   カメラ、マイク、ファイバースコープ、記録装置、光ファイバー機器

15 化学剤検知器

16 衛星通信機器

17 狙撃用具

   ずだ袋、マット、低倍率望遠鏡、狩猟服等

18 レーザー照準器

19 解錠銃

 

特殊部隊による飛行機や船舶の制圧(突入)

 本投稿においては、ハイジャックされた旅客機の制圧やシージャックされた船舶の制圧方法について簡単に記述する。対テロ部隊による急襲は、建物のほかに旅客機、バス、電車等『直線状』の目標が多い。また、船舶を制圧する場合もある。旅客機(直線状の目標)と船舶のそれぞれの制圧方法について簡単に紹介する。

 旅客機(直線状の目標)の制圧

 直線状とは、まっすぐの意でありバスや電車の形を思い出しもらえば分かる。いずれも狭く移動に使える空間は限られている。急襲チームが銃弾を避けられる場所はほとんどない。一般に旅客機に限らず直線状の目標は突入口が限定されるため難しい。

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 旅客機は窓が機体の側面全体にあるため、接近する急襲部隊が見つかりやすい。また、突入口もドアと非常口に限られることが多い。突入した隊員が、コックピットに潜んでいたテロリストに撃たれる可能性もある。

 なので諸外国の特殊部隊(対テロ部隊)は、空港等でハイジャック訓練を繰り返している。そして航空機と空港の運用についても学んでいる。例えば、飛行機の死角、ハッチを開けるとコックピット内のどの警告灯が点灯するか、爆薬で開けやすい場所はどこか、といったことを学ぶ。

 典型的なハイジャック事件では、旅客機が着陸すると狙撃・観測チームを周囲に配置する。機体の観測担任区域を区分し、名前を付ける。

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あくまで一例である。テロリストの活動が特に目立つ区域や急襲部隊が突入する場所には、狙撃手を増強することがある。

 各区域(例えば『パパ1』)につき、1個狙撃・観測組が配当される。上記の例では少なくとも8個の組が情報を収集し、テロリストの動向を指揮所に伝える。

 急襲部隊は、航空機の死角である真後ろから接近し配置に着くことが多い。万一、テロリストに発見された場合を考慮して狙撃手が援護する。

 急襲が始まると同時に、狙撃手が窓から見えるテロリストをできるだけ多く無力化する。テロリストを狙った弾は、機体や窓を貫通するので、披甲(真鍮製の外皮)がない弾丸が使われる。普通の弾では、機体や窓を貫通した際に破片が発生し、人質を傷つける恐れがあるからだ。

 そもそも航空機を離陸できないように狙撃することもある。その場合はバレットM82A1のような50口径の狙撃銃を使用する。

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バレットM82A1

 急襲部隊は通常数か所から機内に突入する。テロリストを麻痺させるために特殊閃光音響弾を投入した直後に突入することが多い。また、機体の上部(機体断面の3分の1部分)を突入のタイミングで狙撃し、乗客に注意を促すと同時にテロリストの注意をそらすこともある。最後の銃撃戦は、首謀者の籠るコックピットで行われることが多い。

 船舶の制圧

 客船のシージャック事件は一般に少ない。理由は、いくつかある。

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① 客船は大きいので船を掌握して数百人規模の乗客を監視することは難しい。

② 一度船に侵入したテロリストは、船という小島(周囲は海)に拘束される。

③ 船を警察や軍隊で包囲することは簡単である。

④ 急襲部隊の突入を防ぐには、船は大きすぎる。

 しかし、シージャック事件が生起すれば、まずは情報収集から実施する。人口衛星、航空機、艦船等で追跡するとともに船主から青写真を手に入れる。急襲部隊は、同型船を用意し、訓練を重ねることにより急襲要領に係る練度を向上させる。

 船から空と海面への視界を遮るものはないので、急襲は通常暗夜に行う。まず狙撃部隊と急襲部隊を乗せたヘリが船の後方から低速飛行で接近する。狙撃部隊のヘリが先行して船の両側・急襲部隊の降着する船尾に対して45度~60度の位置でホバリングし、援護態勢を確立する。つづいて急襲部隊が降着し、作戦を開始する。急襲部隊の隊員は、友軍相撃を防ぐために反射性のテープや赤外線を放射する化学スティックを身に着ける。

 狙撃部隊は、なるべく多くのテロリストを無力化するとともに、テロリストの配置、仕掛け爆弾の有無、武器の種類、安全な経路等について情報を集め、急襲部隊に伝える。

 ヘリを使わずに制圧する場合もある。高速艇のエンジンを切って静かに船尾に近づき、船に乗り込むのである。スキューバダイビングや潜水艇なら昼間でも近づくことができる。海面から船に乗り込む場合は、塗装作業用の伸縮棒や鉤のついた縄梯子を使ってよじ登る。

 どの方法で乗船したにせよ、急襲部隊は基本的に一列縦隊でテロリストや人質を処理しながらブリッジ(船橋)へ向かう。小部屋は2名で掃討する。隊員2名が船室に入ると、すぐに左右に分かれて壁沿いに前進し、受け持った警戒区域武装したテロリストがいれば撃つ。逮捕者は船室に『固定』される。なので隊員は最低6名を拘束できるだけの器具を携行する。

 食堂や船員休憩室のような大部屋は4名で掃討する。そうして船室から船室へ、甲板から甲板へ掃討してゆく。急襲部隊は船内の空間に応じて適切な隊形をとる。L字型の廊下は1名で、T字型の廊下は2名で、十字型の廊下は3名で、屋内の階段は1名で、屋外の階段は4名で、ブリッジは4~6名で掃討する。

 ブリッジを制圧すると、後続部隊が船に降着し人質や負傷者の処理をする。その間、急襲部隊は船底部を掃討する。通信室、機関室、操舵室を引き続き監視し、テロリストが生き残っていても船に損害を与えられないようにするのだ。船内の掃討が終わり、逮捕者が抜け出していないことを確認後、急襲部隊は引き上げる。

 

 テロリストへの実力行使は、『スピード、奇襲性及び打撃力』が重要である。

 

 

 

 

特殊部隊による建物制圧(突入)

 本投稿においては、特殊部隊であるテロ対策部隊がどのようにテロリストが占拠する建物を制圧するかを簡単に記述する。

 テロリストへの実力行使(急襲)における重要な3要素を改めて紹介する。『スピード、奇襲性及び打撃力』である。

 大部分の人質事件は屋内で起きるので、テロ対策部隊は訓練時間の多くを建物への急襲訓練に配当する。

 実際にテロリストによって建物が占拠されると警察は偶発的な衝突を防ぐために市民や報道陣の立ち入りを規制する。この際、二重の阻止線を構成することが多い。同時に狙撃・観測チームを配置して、事態を封じ込める処置をするとともに情報を収集する。集めた情報は無線等で戦術指揮所(CP)に送られる。

① テロリストの人数

② 兵器の種類 

③ 仕掛け爆弾の有無

④ テロリストの動向 

⑤ テロリストと人質を判別するための特徴

等は重要な情報である。

敵情(テロリストの配置等)の誤認を防ぐとともに簡明な情報共有のために、建物の窓にはSOP(作戦行動規定、あらかじめ決めておくことで有利になる手順のこと)が適用される。以下に一例を示す。

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窓の奥にいるテロリストを監視する上で名前が必要である。

 上図を見て頂きたい。この建物は、4階建てであり上空から見ると四角形である。建物の窓は、例えば以下のようなルールを付ける。(SOP)

① 建物の正面を『白』、裏は『黒』、左側は『緑』、右側は『赤』と呼称

② 窓の位置は『最上階(上)から1階(下)、左から右』へナンバリングする。

(例その1)「タンゴ 白 1 2』 ⇒ 写真の赤円表記の窓にテロリストを発見

(例その2)「タンゴ 白 3 4』 ⇒ 写真の青円表記の窓にテロリストを発見

 このように窓に対して名前を付けることで情報の共有がスムーズになり誤認も防ぐことができる。窓から見えるテロリストの行動を逐次CPへ送信し、行動パターンを把握するのだ。

 建物への突入を計画するために急襲部隊はまず、建物の青写真を入手するとともに当該建物の清掃業者や建築士に対しても情報を収集する。そして内部構造を把握して突破口となるうる場所を把握する。

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図面を使って突入口を検討する。本物同様の模型を構築することもある。その模型を使って訓練してから実力行使にでる場合もあるからだ。

 突破する場所が決まれば爆薬を仕掛けてドアや外壁を破るだけである。突入の直前には、『スピード、奇襲性及び打撃力』の原則に従い必ず何らかの方法で『テロリストの注意をそらす』ことが試みられる(陽動作戦)。以下に例を列挙する。

① 突破口とは反対側に特殊閃光音響弾を投入

② 別の階の窓に木製のバトン弾(エアガンで使うBB弾のような非殺傷性の弾)や催眠弾を発射

③ ヘリコプターを低空飛行させる。

④ 建物への電力を止める。

 突入時期は夜明け前が多い。テロリストの眠気と暗闇を利用するためである。

 建物への突入は、少なくとも2か所から実施するのが定石である。この時、1組の部隊は屋上又は最上階から突入し、1階ずつテロリストを掃討しながら降りていく。この戦術は、テロリストに背後を襲わないようにするためのものである。

 夜間の急襲では隊員が暗視眼鏡を利用できるように建物への送電を止めることが多い。テロリストが暗闇の中を右往左往する一方、部隊は暗視眼鏡で行動を容易にすることができる。

 建物への突入後、各部隊は一列縦隊で素早く行動することが多い。ただし、廊下や階段等の狭い場所・通路では危険(密集しているので機関銃の掃射に弱い)なので、地形に適応して各人間隔を広げる。場合によっては、成型炸薬等で新たに『廊下』を作る。部屋と部屋の間を爆破してネズミ穴を作るのである。

 いずれにせよ、テロリストに行動を予測されないように注意する必要がある。例えば、リズミカルな行動を避け、部屋に入る姿勢、進入角度を変えてテロリストに場所を悟られないようにする。部屋によって突入する隊員を2名、4名、6名等に変える。部屋への突入は、ボタンフック法で2名ずつ入ることもあれば、X字突入法で一人ずつ入ることもある。

特殊部隊による室内突入法(第2回)

 本投稿においては、急襲チームの隊員が室内に突入する要領を紹介する。分かりやすく言うのであれば、2名(以上)による『ドアのくぐり方』である。サバイバルゲーム愛好家の方はご存じかもしれない。

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室内訓練を実施するFBI人質救出チームの隊員

 一般的にドア(成型炸薬等で作った『ネズミ穴』を含む。)から進入する要領は2種類ある。下図を参照されたい。

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突入法の要図

 X字突入法では、急襲部隊は遮蔽物の陰から素早く部屋に進入することができる。ただし1名ずつ進入する必要がある。

 ボタンフック突入法では、2名ずつ部屋に入ることができる。しかし、戸口が広くなければならない。

 小さな室内等における突入は通常2名で実施されるので、上記要領のいずれかを選択することが多い。しかし、4名以上の突入の場合、2種類の方法を併用(変形)することもある。

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 上図は、4名が室内に突入した後の状況図である。(特殊部隊による室内突入法(第1回)を参照)

 急襲チームの初期配置をイメージして頂きたい。各隊員はどのようにドアをくぐっていったのか解説する。

  ①は、X字突入法により進入(1名で進入しているので変形版)

  ②は、ボタンフック法により進入(1名で進入しているので変形版)

  ③は、X字突入法により進入(1名で進入しているので変形版)

  ④は、ボタンフック法により進入(1名で進入しているので変形版)

 爆破係『A』の配置によりボタンフック法による2名同時進入は難しいため、1名ずつ進入している。爆破係の配置及び爆破口を工夫することにより、2名同時のボタンフック突入法も可能であろう。

ネイビーシールズの写真集

 本投稿においては、ネイビーシールズのフリー素材である写真をいくつか紹介する。元サイトは、https://www.sealswcc.com/navy-seal-photos.html

 どれも高画質なので重宝する。

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特殊部隊による室内突入法(第1回)


 本投稿においては、特殊部隊の中でも対テロ部隊(アメリカ陸軍デルタフォース、アメリカ海軍特殊戦開発群(DEVGRU)等)が室内掃討する上での突入要領を一部紹介する。サバイバルゲーム等にも応用できる。

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FBI人質救出チームの訓練風景。縦隊の隊形をとっている。

 (引用:FBI Official Website https://multimedia.fbi.gov/?q=&perpage=50&page=9&searchType=image

 下図を参照して頂きたい。簡単な室内に人質1名を含むテロリストが1名が占拠している。

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 ここでは、4人の部隊による突入要領を示す。

1 爆破係の『A』がドアを爆破する。

2 縦隊の先頭である①が室内に特殊閃光音響弾を投入して爆発後、部屋の最も遠い隅に突入、室内の大部分を制圧(この時点でテロリストは無効化するのが望ましい。)

3 隊員②は、部屋に入り①と反対側の部屋の隅に突入

4 隊員③は、①に続き突入

5 隊員④は、②に続き突入

 以上の要領を7秒以内に実施する。(細部は部屋の規模・状況による。)

 テロ対策部隊は、『スピード、奇襲性及び打撃力』の3要素を強襲の時に満たすように努めている。テロリストがショックで反撃できないように強力な打撃を急速に与える必要がある考えている。(イスラエルの特殊部隊である『モサド』は、逆の思考でありゆっくり確実に実施する。)

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最終的な警戒の態勢である。各隊員から伸びる直線は、警戒担任区域である。

 特殊閃光音響弾は、敵の視聴覚を一時的に奪うように設計されている。使用に伴い火災が発生することもある。敵が、特殊閃光音響弾を拾って投げ返すことができないように、通常1.5秒以下のごく短い信管を使用する。M84スタングレネードが有名である。

 ③の隊員は、他の隊員に比して分厚く防弾装備を装着することが多い。先頭の二人がテロリストを倒せなかった場合、三人目が部屋に突入する時にはテロリストが気を取り直し、反撃してくることが多いからである。

 テロリストを倒したのちの手順は、

1 人質を含む全員を手錠かタイラップで拘束

2 死んだふりをしている者等脅威となる者が死者の中に混じっていないか確認

  この際、失神等している相手の目を軽く叩いて痛みに反応しないかを確認

3 室内に仕掛け爆弾等の脅威がないか確認

4 人質及び逮捕者を室内から退避

以上の手順となる。

 また、いくつかの予備知識を紹介する。

 全員を手錠又はタイラップで拘束する理由は、人質を『人質のふりをしているテロリスト』の判断に時間がかかるためである。

 急襲部隊が縦隊の隊形(『列車』、『蛇』等と呼ばれている。)をとるのは、建物や船内を素早く進んで室内のテロリストを掃討するのに適しているからである。一般に廊下等は地積が狭く横隊に展開することが難しい。しかし、正面への火力発揮を考慮すると横隊が望ましいうえ、狭い通路を縦隊で前進することはリスクを伴う。一列に並んだ隊員をドミノ倒しのように正面射で打ち抜くことができるからである。このため、廊下を使わずに、部屋と部屋の間の空間を前進することも多い。やり方は、部屋の仕切りを成型炸薬で爆破して『ネズミ穴』を進むのである。

【初心者向け】地図の読み方(第2回)

 第2回目の本投稿は、山中の前進経路の選択について記述する。

 まずは、下図を確認して頂きたい。

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 さっそく課題にかかる。

 課題:貴官の現在地は、・254である。△380.1まで移動するための経路を選定せよ。

【状況等】

 〇 当然、登山道を利用することはできない状況である。

 〇 2点間の直線距離は約300mである。

 〇 2点間に清水谷(図中では谷という字が切れてしまっている。)が存在

 〇 貴官は、重たいバックパック(30kg)を背負っている。

【解答】

 3通りの経路に集約されると思われる。

 ① 直線的に前進する経路(赤色調)

 ② 北西に伸びる尾根を利用して半時計回りに前進する経路(青色調)

 ③ 当初西に前進し、尾根に乗ったのちに北へ前進する経路(緑色調)

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【解説】

 ①について

 最短経路である。

 目標となる△380.1の方角(311度)をコンパスに入力し、前進間その方角を維持することで目標に到達する要領である。着眼は漫然とコンパスを見ながら歩き続けるのではなく、地形結節ごとに前進方向を確認し(この際、遠くの地形地物を補助目標として方向維持に資する。)、歩を進めること。

 ただし、地形上清水谷を経由する必要があり、天候によっては渡渉困難な川が存在する可能性がある。また、谷を前進する際は、斜面の落ちる方向へ流されやすいため注意が必要である。谷をまっすぐ歩くこと(ましてや重いバックパックを背負った状態)は、意外と難しい。

 ②について

 もっとも長い経路である。

 尾根をたどる要領である。谷を通過しないため地形障害に遭遇する可能性はゼロに等しい他、地面は固い傾向にあり歩きやすいため意外と速度を発揮しやすい。着眼は尾根をたどる上で、その都度歩測及びコンパスを活用して確実に尾根に乗り続ける必要があること。この際、『今上っているのか、下っているのか、平坦なのか』を五感で体感しながら前進する着意も必要である。

 昼間であれば、周囲の景色(周囲の谷等)を確認しながら進めるためより容易に前進できるだろう。

 ③について

 ②よりは短い距離である。

 当初は、コンパスによる方向の維持によって大きな南北に延びる尾根まで前進し、尾根に乗ったあとは北へ尾根を上って目標へ到達する要領である。着眼は①に準ずるほか、乗る尾根を間違えない(歩測の活用)ことである。

 しかし、①と同じく清水谷を超える必要があること、また勾配が急峻であるため体力を大きく奪われかねないことに注意しなければならない。

 結論としては、前進の容易性から②を指導案とする。